八戸せんべい汁とは
前回は「美六姫」についての商標登録についてご紹介しました。今回は「八戸せんべい汁」の商標登録についてです。八戸せんべい汁は青森県八戸市の郷土料理です。詳しくは別投稿で紹介していますので、そちらをご覧ください。
B1グランプリの商標登録
まず商標登録は「J-PlatPat」で誰でも確認する事ができます。
「せんべい汁」と言えば「八戸せんべい汁研究所」が「B-1グランプリ」を企画し、「B-1グランプリ」が全国区になると共に有名になった郷土料理でもあります。
まず「B-1グランプリ」の商標登録を見てみましょう。
4件HITしましたが、いずれも「一般社団法人愛Bリーグ本部」が登録したもので、商標の範囲が違えど内容はほぼ同じものです。「B-1グランプリ」は全国的な知名度が高いので、「B-1グランプリに出た〇〇の商品」と宣伝したい方もいるでしょうが、この登録で無断利用はできない事がわかります。
せんべい汁の商標登録
では次に肝心の「せんべい汁」はどうでしょう?
4件登録されています。
1件はせんべい汁に関連する商品が「せんべい汁」の呼称で検索HITしたもので、「せんべい汁」そのものを登録したものではありません。
残り3件が「八戸せんべい汁研究所」のメンバーか関係者と思われる方の個人名で登録されています。ただしこちらも「せんべい汁」そのものを登録したものでは無いようです。
①好きだDear!八戸せんべい汁 八戸せんべい汁研究所
②八戸せんべい汁研究所®
③八戸せんべい汁研究所推奨 八戸せんべい汁®
①~③は2007年~2011年の登録なので、かなり昔の申請の話になります。
まず①と②は、「八戸せんべい汁研究所」の「団体名」そのものを守るために登録されたものでしょう。①は団体のマークも登録されています。「好きだDear!八戸せんべい汁」はスローガン的な言葉で、せんべい汁の公式テーマソングもこの名前で発売されています。余談ですが、かなり昔「特上!天声慎吾」という番組で香取慎吾さんが八戸に来られて、公式テーマソングをメンバーの方に(半分嫌嫌な雰囲気で)ダンスを踊らされるという企画を放送していました(笑)。
さて問題は③ですが、これも「八戸せんべい汁」を登録したかったようにも見えます。公式HPでも『「八戸せんべい汁™」も商標登録出願中』という記載があります。「八戸せんべい汁研究所推奨」という言葉があえて付いているということは、おそらく単独で「八戸せんべい汁」は不採用だったのだと思われます。
これはなぜでしょう?商標登録は商品、ブランドや団体の、名前やマークなどを守るために存在します。「せんべい汁」は商品、ブランドなのでしょうか?
「八戸せんべい汁研究所」は公式HPでは「市民ボランティア団体として旗揚げ」と記載されています。ボランティア団体がB-1グランプリを企画し、イベントを全国区にした素晴らしい団体です。ただ残念な事に企業ではないのが影響してるのでしょうか?
これは推測になりますが、「せんべい汁」は郷土料理です。商品やブランドと言うには難しいように思えます。ただでさえ難しい条件であるところに、個人名で登録しようとしているので、個人が郷土料理の権利を取るように見られているかもしれません。
似たようなイメージの話としては、過去に「青森りんご」を全く無関係の中国の国内で商標登録されようとした事件がありました(未遂で終わりましたが)。「青森りんご」が誰か個人の手によって商標登録されたら、皆さんはどう思うでしょう?
繰り返しになりますが、「せんべい汁」を商標登録を目指した「八戸せんべい汁研究所」は、今でも「せんべい汁」の良さを広めようと、頻繁にイベントなどを行っている素晴らしい団体です。ですが残念な事に客観的に見てしまえば、「せんべい汁」の商標登録もブランドに見られなければ、「青森りんご」のような例に見られても仕方ありません。
まとめ
それでは、B-1グランプリで登場するご当地グルメは、どれも商標登録できないのでしょうか?実は「富士宮やきそば」などは商標登録できております。ご当地グルメをブランドとして見られているかの違いだと思います。
せんべい汁は今後も商標で守る事はできないでしょう。こうなってしまっては、粗悪の商品、模倣は味を知っている我々の目で判断するしかありません。後世に正しく「せんべい汁」を伝えるために、私も微力ながら情報を発信していきたいと思います。